
老舗ブランド戯画より発売されたシネマチック学園アドベンチャー。公式で大きく打ち出しているように『青春』をテーマにした夏の物語です。アオナツ=青夏=夏の青春ですね。「青春」は手垢のついた題材ではありますが、それだけ王道であり普遍的なもの。その分やりたいこと、やることが明確なので、合う合わないも明確になるのではないかと思います。青春という時間に宝石のような輝きを見るような人間は、私のような人間ですが、やって損はないと言えるものになっています。ちなみに、発売時期もあって『平成最後の青春エロゲ』なんて言われていたりもしますね。さらに言うと、移植版が『Vita最後の青春美少女ゲーム』になりそうです。
青春とはなんでしょうね? 甘く苦い恋の時間。他のことなんて気にせずに何かにひたむきに打ち込むことが出来る時間。大人と子供の中間地点。いろいろなことを諦められるわけでもなく、子供のように無邪気に生きる事が出来るわけではない時間。青春と一口に言ってもいろいろあると思います。『アオナツライン』の持つ青春についてはやった人の心の中にあるとして、ざっくりと表面をなぞるならばストレートな学園恋愛青春ものとなっています。ファンタジー要素はなく、SF要素もなく、かと言って部活動を中心としたものでもない、本当にすぐ隣の日常にあるようなものをテーマにしたただの学園恋愛ものです。ぜひ『青春』の物語が好きだという方は体験版をチェックしてみてください。もちろん『青春』にも種類はありますが、体験版が楽しめたら、間違いなくそれ以降の展開も楽しめるはずです。大抵の物語はそうだと言ってしまえばそうなのですが、この作品ではいかに作品世界・日常にのめりこめるかが重要なので、共感を得られた方は是非! 誰もが経験したようなこと(自分の場合は失敗関係)を丁寧に描いているおかげで、身近に感じられる部分があるんじゃないかと!
私の率直で簡潔な感想としては、久しぶりに自分が「出会うべき物語」に出会うことが出来た気がします。「出会うべき物語」という表現は私にとって最高峰の褒め言葉で、実際に私のエロゲ史に刻まれる一作であることは間違いありません。シナリオ、絵、音楽、UI、演出等すべてが丁寧に作られた作品でした。その丁寧さが作品の魅力を底上げしていたと思います。シナリオとしては「海希」、キャラクターとしては「ことね」が好きです。ことねに関しては、タメ口で「○○君」って呼ばれた過ぎてダメになってしまいます……。
青春という眩しい時間。眩しさと言っても楽しいだけではなく、ぶつかり合うことも、悔しさが滲むことも、そんなマイナスなことも含めての眩しい青春です。言葉にしてみればなんてことはないことを、ただただ丁寧にやっていたからこそ名作となった、そんな作品です。プレイ後には虚無感に襲われましたし、それと同時にアオナツラインの日常がどれだけ眩しく、煌めきに満ちていたのかという思いが涙となって溢れていきました。
この作品を好きになることが出来た人は、おそらく私のように終わった後の余韻がすさまじいことになると予想しています。ですが、特典ドラマCDのようなものもなく、おそらく続編・FDも出ないでしょう(そもそもそういう作品ではないです)。なので、終わった後には、公式HPのコンテンツ、特にプロダクションノートを読んでみるといいんじゃないかと。製作陣が何を成そうと考え描いていたのか、作品に対しての熱、その一端を感じるが出来ます。私も作品を終えた後、公式HPにあるIntroductionのページからじっくり読んでみました。すると自分が感じたことに近いことがそのまま書かれていることに驚きがありました。なによりも「等身大」というキーワード。物語と現実は違いますが、アオナツラインには物語なりのリアルを感じることが出来ました。
続編・FDなどがないと言いましたが、原画を担当された、うみこさんが
『アオナツライン ArtWork』というアオナツライン関係のイラストをまとめた同人誌を出しています。その中にはシナリオを担当された大地こねこさんが提供したショートショートもあるので、今となっては入手困難品ですが是非読んでほしいです。もちろん必読というようなものではありません。ただの日常の1ページを描いたものです。そしてそれが素晴らしい。
DMMダウンロード版5月15日までサントラ付き知らない人向けに、イベントモードの使い方でこんなのありますよ、というもの。
詳細感想は続きからどうぞ。
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